失敗しないデータ分析「問い」の技術

データ分析で新しい発見を!「切り口」を変える問いの立て方

Tags: データ分析, 問い, 切り口, 多角的視点, ビジネス課題

データ分析に取り組む際、「データは手元にあるけれど、何から手を付けて良いか分からない」「一生懸命分析したのに、結局役に立たなかった」といった経験はないでしょうか。このような場合、原因の一つとして、データ分析の最初のステップである「問い」の立て方に課題があることが考えられます。

特に、データ分析の「問い」を立てる際に、「どの視点、つまり『切り口』でデータを見るか」という視点が欠けていると、分析結果が単なる集計に終わってしまったり、ビジネス上の重要な課題解決に繋がらなかったりすることが少なくありません。

なぜ「切り口」が重要なのか?間違った問いが生む落とし穴

データ分析における「問い」とは、「何を知りたいのか」「何を明らかにしたいのか」を明確にするための出発点です。しかし、この問いが単一的であったり、適切な「切り口」を含んでいなかったりすると、以下のような問題が発生しやすくなります。

このように、間違った問い、特に「切り口」の視点が不足した問いは、データ分析を時間のかかる「集計作業」や「結果報告」で終わらせてしまい、真の価値を引き出すことを妨げてしまうのです。

データ分析で新しい発見を!多角的な「切り口」で問いを立てる方法

では、どのようにすれば、より深く、ビジネスに役立つ新しい発見に繋がる「問い」を立てることができるのでしょうか。重要なのは、「どのような『切り口』でデータを見るか」という視点を意識することです。

効果的な問いを立てるための具体的な手順と、検討すべき「切り口」の例を見ていきましょう。

  1. ビジネス課題を明確にする: まず、あなたがデータ分析を通じて解決したい、あるいは明らかにしたいビジネス上の課題は何ですか?「売上を伸ばしたい」「顧客満足度を向上させたい」「業務効率を改善したい」など、漠然としたものでも構いませんので、出発点を明確にします。

  2. 課題の背景にある「なぜ?」を深掘りする: 明確にした課題について、「なぜその課題が発生しているのか?」「その課題を解決することで、何が得られるのか?」といった「なぜ?」を自問し、深掘りします。この深掘り作業を通じて、課題の要因や影響範囲が明らかになり、分析で知るべきことが見えてきます。

  3. 課題解決に繋がりそうな「切り口」の候補を洗い出す: 深掘りした課題に対して、どのような視点(切り口)からデータを分析すれば、原因の特定や解決策のヒントが得られそうかを考えます。ターゲット読者の皆様がよく扱う可能性のあるデータから、検討すべき一般的な「切り口」の例をいくつかご紹介します。

    • 時間軸:
      • 期間別(年別、月別、日別、曜日別、時間帯別)
      • 特定の時点からの経過時間(例:初回購入からの期間、サービス利用期間)
      • 頻度(例:購入頻度、アクセス頻度)
    • 顧客軸:
      • 属性別(年齢、性別、地域、職業など)
      • 行動別(購入履歴、Webサイト閲覧履歴、利用サービス、問い合わせ履歴など)
      • セグメント別(新規顧客、リピート顧客、優良顧客、離反顧客など)
    • 商品・サービス軸:
      • カテゴリ別、シリーズ別
      • 価格帯別、利益率別
      • 関連性(併売商品、次に購入されやすい商品)
    • チャネル軸:
      • 販売チャネル別(オンライン、店舗)
      • 集客チャネル別(Web広告、SNS、メール、自然検索など)
    • 地域軸:
      • 国別、都道府県別、市区町村別、店舗エリア別
    • 担当者・組織軸:
      • 営業担当者別、店舗別、部署別
  4. 洗い出した「切り口」を組み合わせて問いを具体化する: ステップ3で洗い出した切り口の候補の中から、ビジネス課題の解決に特に有効だと思われるものを複数選び、それらを組み合わせて具体的なデータ分析の「問い」を作成します。単一の切り口で終わらず、複数の切り口を組み合わせることで、より深い洞察を得られます。

    問いを具体化する際の例:

    • 漠然とした問い: 「顧客の売上はどうなっているか?」
    • 単一の切り口での問い: 「売上高上位の顧客は誰か?(顧客軸:売上高)」
    • 複数の切り口を組み合わせた問い:
      • 特定の期間(時間軸)において、優良顧客(顧客軸:セグメント)どのカテゴリの商品(商品軸)どのチャネル(チャネル軸)で購入しているか?」
      • 初回購入から半年以内(時間軸)リピート購入した顧客(顧客軸:行動)は、そうでない顧客と比較してどのような属性(顧客軸:属性)に特徴があるか?」
      • 特定の地域(地域軸)新規顧客(顧客軸:セグメント)は、どの集客チャネル(チャネル軸)からの流入が多く、初回購入時にどの商品(商品軸)をよく購入する傾向があるか?」

    このように、複数の「切り口」を意識して問いを立てることで、単なる数字の羅列ではなく、ビジネスの状況を多角的に理解し、新しい発見や改善策のヒントを見つけ出すことが可能になります。

  5. 手元データで分析可能か確認する: 立てた問いに必要なデータが手元にあるか、または取得可能かを確認します。どんなに良い問いでも、分析に必要なデータがなければ実行できません。利用可能なデータの種類に合わせて、問いを調整することも必要です。

事例:ECサイトの顧客離れ分析における「切り口」の活用

架空のECサイトで「最近、優良顧客の離脱が増えているようだ」という課題が発生したとします。この課題に対し、「多角的な切り口」を意識して問いを立てるプロセスを見てみましょう。

このように問いを具体化することで、分析の方向性が明確になります。単に「離脱率」を見るのではなく、「どのような顧客層が」「いつ頃から」「どのような行動をとった後に」「具体的にどのサービス/商品に関連して」離脱しているのか、といった詳細を掘り下げることができます。これにより、「特定のカテゴリ商品の購入者には、購入後のフォローメールを送る」「利用開始から3ヶ月の新規顧客には、限定クーポンを配布する」といった、より具体的で効果的な施策検討に繋げることが可能になります。

まとめ:データ分析の問いに「切り口」の視点を取り入れる

データ分析を単なる集計作業で終わらせず、ビジネスに役立つ新しい発見や深い洞察を得るためには、データ分析の「問い」を立てる際に、「どのような『切り口』でデータを見るか」という視点を持つことが非常に重要です。

まずは、解決したいビジネス課題を明確にし、その背景にある「なぜ?」を深掘りしてください。そして、時間軸、顧客軸、商品軸、チャネル軸など、様々な「切り口」を検討し、それらを組み合わせて具体的な問いを立てる練習をしてみましょう。

一度に多くの切り口で分析することは難しくても、まずはいくつかの主要な切り口からデータを見てみることで、これまで気づかなかった課題や機会が見えてくるはずです。この「切り口」を意識した問いの立て方は、データ分析をより有益で、実践的なものへと変える第一歩となるでしょう。